Midwifery student uniform

助産科卒業生のための記念ユニフォーム

依頼のあった看護学校の助産科では、最終学年になると実習の際に着用するウェアの制作を恒例としている。通常は既製のTシャツやポロシャツに学生自らデザインしたプリントを施すのだが、今回、学生の一人から寺本にウェア用のイラストレーションを描いてもらおうという提案があり、ROOPEEを介し依頼があったのが発端である。

イラストレーションだけではなくデザイン込みで引き受けることになったが、新型コロナウイルスの感染拡大によって臨地実習(病院や診療所で実践的な臨床を学ぶ授業)がほとんど実施されず、そのまま卒業を迎えることになってしまった。例年と大きく異なる状況で不安を抱えたまま現場に立たざるを得ない卒業生に対して、ROOPEEは「実習のためのウェア」ではなく「未来の助産師のためのユニフォーム」をコンセプトとしウェアを制作、贈呈することとした。

助産師の業務は直接的な助産行為だけでなく、産前産後のケアや育児のサポートなど、母子の健康に関する支援・教育・相談業務に携わる時間が多い。そのため、助産院で働く助産師には温かい印象で妊産婦に安心感を与えるエプロン姿や、病院によってはホテルやエステティックサロンのような清潔感と高級感のあるウェアを採用するなど多種多様で、共通するのは助産師がケアする相手、妊産婦のためのユニフォームということである。

本プロジェクトではファッションブランド「NAKAGAMI」デザイナーの中神一栄さん、パタンナーの福居良子さんにご協力いただいた。デザインを考えるにあたり、きっかけとしたのはかつての「産婆」のイメージである割烹着。動きやすさと装飾性の両立を目指し、フロントボタンのワンピース型のユニフォームを制作した。素材は汚れが落ちやすくシワになりにくい生地を使用。ケアを受ける妊産婦がリラックスできるのはもちろんのこと、看護職のなかでも独自の歴史を歩んできた助産師の専門性の表現を試みた。(寺本 愛)

中神一栄(NAKAGAMIデザイナー)
福居良子(パタンナー / CHIC代表)
寺本愛
瀧尻賢
2021年3月制作